『あるスキャンダルの覚え書き』(2006 英)
原題:『NOTES ON A SCANDAL』(92分)
監督:リチャード・エアー
原作:ゾーイ・ヘラー
脚本:パトリック・マーバー
音楽:フィリップ・グラス
出演:ジュディ・デンチ
ケイト・ブランシェット
ビル・ナイ
アンドリュー・シンプソン
ともにエリザベス女王を演じたことのあるジュディ・デンチとケイト・ブランシェット共演の怖~いお話。別にホラー映画じゃないんですけどね。
ロンドン郊外の中学校を舞台に、15歳の教え子と禁断の関係を持ってしまった新任の美術教師(C・ブランシェット)と、その秘密を利用して彼女に近づいていく孤独な初老の女教師(J・デンチ)との間で繰り広げられるスリリングな愛憎の行方が緊張感いっぱいに綴られてゆく映画。
グロリアさんがご自分のブログで書いてらっしゃるのを読んで面白そうだなと思っていたけど、予想以上だった。
これ、原作があるんだけど、その原作の元になった事件が確かあったのを思い出した。
調べてみたら、1996年だからもう10年以上前のこと。
米国のとある中学校で、なんと13歳の男子生徒と深い関係になり、その子供まで身ごもった女性教師がいたのだ。
その女性、メアリー・ケイは当時34歳で既婚、しかも4人の子持ち。
当然、問題となり、裁判沙汰になった。
だけどこの事件、それで終わりじゃない。
保釈中にメアリー・ケイは少年とまたメイクラブをし、2人目の子まで孕んじゃった。
懲りない彼女はその罰として収監され、7年半の刑期を務めることになる。
そのあたりの顛末は、ニュースか何かの番組で見たことがあったけど、知らなかったのは
2004年に出所後、メアリー・ケイは成長した少年と翌05年に結婚していたこと。
結婚した当時の写真を見て、いやあ驚いた!
何で驚いたかって?
じゃ、これをご覧くださいまし。
43歳になったメアリー・ケイが美しいのにまず驚いたけど、それ以上に驚いたのは成長して22歳になった少年(ヴィリ)。
えっ、ブラザー・トムさん?
って勘違いしそうなお顔立ちのヴィリ君。
正直、こういう男性だとは想像していなかったので、唖然呆然としてしまったのでした(^^;
原作小説や映画が、この事件の顛末を描いただけだったら、
ただのスキャンダラスな物語というだけで終わっていたことだろう。
だけど、そうはしなかった。
この物語には、もうひとり強烈な個性を放つキャラクターが登場する。
それがジュディ・デンチ扮する初老のベテラン教師バーバラだ。
バーバラは孤独だ。
というのも、自分が求める相手にしか心を開くことができないし、愛を捧げられないから。
彼女が求める範疇には男性はいない。
猫のようにしなやかで、自分勝手で、しかも保護欲求を満たしてくれるような儚げな相手でなくては愛を感じない。
そういう相手は、同性の中でも限られている。
そんな希有な存在が新任教師のシーバだった。
そのシーバが教え子との禁断の恋におちてしまった事を目撃したことは、バーバラにとって何の障害にもならなかった。
かえって彼女の保護欲求を刺激しただけだった。
しかも、相手の弱みを握るということは、相手をコントロールするためには不可欠のものだった。
そんなバーバラをジュディ・デンチが見事に醜怪に、しかも平然と演じきっている。
そして、そんなバーバラの餌食になるシーバをケイト・ブランシェットがこれまた見事に美しく淫らに演じてる。
何はともあれ、バーバラというキャラクターを創造したことで、このお話は事実を凌駕した・・・
そう思える映画だった。