人気ブログランキング | 話題のタグを見る

映画の心理プロファイル

『容疑者Xの献身』(2008 日)

『容疑者Xの献身』(2008 日)_a0037414_9171333.jpg
『容疑者Xの献身』(2008 日)_a0037414_9212596.jpg
この映画を観た後、記事を書くためにポスターを探してみて驚いた。

「えっ、こんなポスターだったの?」

あまりにも映画の印象と違うポスターに面食らってしまったのです。
映画の内容と比べると、なんとも軽い。なんとも脳天気。
たまたま見つけた韓国のポスター(右)のほうが、よほど作品の雰囲気が醸し出されてる。

これって、やっぱり制作者側の思惑が反映してるんだろうな。
この映画、テレビでやっていたドラマ『ガリレオ』の劇場版なのだけれど、
その手の映画にしては珍しくよくできていた。というか、珍しく映画として独立していた。
原作は読んでいないのだけれど、きっと原作に近づけようという努力がなされたのだろう。
それだけに、何回か見たことのあるTVドラマのテイストとはかなり違っていた。
だけどそれは制作サイドとしては困ることでもあったんだろうね。
だって、『ガリレオ』のファンから拒否反応が出るかもしれないから。
ドラマのファンを是非とも動員したい制作サイドとしては、せめてポスターはTVドラマのテイストを残したかったんだろう。だからこんな軽い感じのものになっちゃったんじゃないかな。

『容疑者Xの献身』(2008 日)_a0037414_2325522.jpg

『容疑者Xの献身』(2008 日)_a0037414_23293481.jpg
監督:西谷 弘  (128分)
原作:東野圭吾
脚本:福田 靖
音楽:福山雅治他
出演:福山雅治
    柴崎コウ
    堤 真一
    松雪泰子
 
風采の上がらない高校の数学教師・石神哲哉は、ある夜、不審な物音を聞く。
アパートの隣室に住む花岡靖子とその娘・美里の部屋で何か異常なことが起きたらしい。
意を決した石神は、花岡靖子の部屋のドアをノックする。

朝、隅田川の河川敷で男の惨殺死体が発見される。
捜査に乗り出す警視庁捜査一課刑事・草薙俊平(北村一輝 )。
やがて、捜査線上に被害者の元妻・花岡靖子が浮かび上がる。

草薙刑事は大学時代の友人で、帝都大学理学部物理学科の准教授・湯川学に協力を求める。
冷静沈着な湯川が顔色を変えたのは、靖子の隣室に住む男の名前を聞いた時だった。
石神哲哉。それは湯川の大学時代の友人、そして、湯川が出会った中で最高の頭脳を持つ男だったのだ・・・。


原作はベストセラーで、映画も大ヒットした作品だから、まあ、書いてもいいか。
ストーリーをひと言で表すと、愛する人を守るため自分を犠牲にする数学教師のお話です。
それだけに主客逆転というか、映画の主役がガリレオ福山と新米刑事・柴崎の2人から、数学教師(堤真一)とその献身を受ける靖子(松雪泰子)に完全に入れ替わっちゃってる。
ここまで主役をないがしろにしたTVドラマの映画板が今まであったかしらん。
特に、柴崎コウの影は薄かったかな。

逆に言うと、そう思わせるほど大胆な演出と堤真一と松雪泰子の演技が良かったってこと。
それがTVドラマの映画版という呪縛を解き放つ原動力になっていた。
前半は謎とサスペンスを前面に押し出して見る側を引き付けておいて、後半は人間ドラマの切なさが胸に迫ってくる・・・・。なかなか楽しめました。

ひとつ、疑問だったのは、花岡泰子の娘・美里の扱い方。
自らを犠牲にしてまでも完全犯罪を目論んだ石神だったけれど、
その緻密な計画が破綻するのはこの美里が原因になるんじゃないかと想像してた。
殺人という事実と記憶は、女子中学生の心の中に収めておくには重たすぎるから。
だけど、ストーリーはそんな彼女の心の内を描くことなく終わっちゃった。
そこが不満といえば不満。原作はその辺り、どう処理していたんだろう。
by kiyotayoki | 2009-08-13 11:07 | 映画(や行)