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映画の心理プロファイル

『ハッピーエンド』(2008 日)

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(90分)
監督・脚本:山田篤弘
音楽:牧野将子 Lifeguard Nights
出演:菜葉菜
    長谷川朝晴
    河合龍之介
    広田レオナ 

今、渋谷のユーロスペースで「真夏の夜の万華鏡」と銘打って、夜9時から若手の映像作家たちの作品が逐次公開されている。
その1本、『ハッピーエンド』を観てきた。

監督は、山形国際フィルムフェスティバルの2007年度のグランプリ受賞者。
その賞金1000万円で撮り上げた作品らしい。
終始のんびりした雰囲気だったのは、全編オール山形市ロケだったためかな?

開演前に、監督やキャストによる舞台挨拶があった。
出演者からは「ポップで楽しい」「日本じゃないような風景や映像の撮り方をしてる」とのコメントがあったので期待が高まった。
『ゴーストワールド』みたいなこだわりのある作品だといいな。

オープニングはまさにそのコメント通り。
ポップで楽しげなタイトルロール。
ショートヘアーをを赤く染めた主人公桃子(菜葉菜)の住むアパートの部屋の壁は
隙間なくポスターだのチラシだのがおしゃれに貼られてる。インテリアの色使いもポップだ。
この室内、撮影前にスタッフ総出で作り上げたんだろうな。思えばセットらしきものはココだけ。
あとは有り物(ロケ)ばかりだから、余計に力が入ったのかもしれない。
そして、意味もなく空から洗濯機がドカッと降ってくる。
おおっと、このドラマ、この後どんな展開を見せるんだ???

・・・・と、興味津々だったのはそこまでだったかなぁ。


映画オタクの桃子の生活はわりとシンプル。
レンタルショップと仕事場の図書館と映画館、それにアパートを加えたエリアが彼女の生活圏。
好きな映画はホラー系で、ラブコメは大嫌い。というか、恋には不慣れで苦手なせいか、無視しているのが実状かな。
レンタルビデオ屋の店長・黒田(長谷川朝晴)が自分に特別な感情を抱いているのを知っているが、それも無視。
そっけない態度をとるし、逆にいじめる。Mっ気のある黒田はそんな関係に満足している風で、桃子が一人前に恋ができる女になれるようにと何かと世話を焼く。典型的なアガペー(献身)タイプの男。
ラブコメにありがち、ベタなキャラだし人間関係です。
ベタといえば、桃子のしゃべり方もそう。これがまさにラブコメの教科書どおりのセリフ回し。
桃子を演じた菜葉菜(なはな)という女優さんもラブコメの主人公の必須条件である「スレンダーで中性的」で「メガネをとるとちゃんと可愛くなる」女の子でありました。

そんな桃子が恋らしきものをして戸惑う姿、そして本当の恋を見つけるまでをカメラは追うのだけれど、
そのどれもがステレオタイプなんだな。それが監督の狙いなのかもしれないし上手くまとまってはいたけれど、新人監督がこんな冒険心のない映画を撮ってていいのかしらん。正直そう思ってしまった(^へ^ゞ。

ただ、映画への愛は感じられたな。
会話の中に映画のタイトルやセリフがたくさん引用されているし。
だけど、みんな古い作品ばかりなんだよなぁ。新しいのでもトム・ハンクス&メグ・ライアンの『めぐり逢えたら』止まり。いくら映画オタクでも、若い子たちの口からこんなに古い映画ばかり出てくるかしら。

そうそう、こんなセリフがあった。
「ラブコメとラブストーリーの違いは、ハッピーエンドかそうじゃないかってとこ」
なるほどね。

嬉しかったのは、桃子の行きつけの映画館として、山形の古い映画館が使われていたこと。
たぶん下の「シネマ旭(あさひ)」という映画館だと思う。
前身の旭座は大正時代からあったらしく、下の建物ができてからも50年以上が経つという。
(残念ながら映画館としては2007年暮れに廃館となったらしい)
この映画館の姿を映像に留めることができただけでもこの映画の価値はあったかもしれないな。
ちょっと辛口になってしまったけれど、若い人たちには日本映画を面白くするためにも頑張ってほしいものデス。

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by kiyotayoki | 2009-09-22 12:15 | 映画(は行)