映画の心理プロファイル

カテゴリ:映画(た行)( 89 )

『ターン』(2000 日)

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英題:『TURN』(111分)
監督:平山秀幸
原作:北村 薫
脚本:村上 修
出演:牧瀬里穂
    中村勘太郎
    倍賞美津子  
    北村一輝

「人には特に勧めないけど個人的には好きな映画」というのがあります。
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『恋はデジャ・ブ』(1993)もそんな作品のひとつ。監督は俳優
としても時々見かけるハロルド・ライミス。主演は『ロスト・イン・
トランスレーション』(2003)で健在ぶりを示してくれたビル・マ
ーレイ。『ゴースト・バスターズ』のコンビですね。
コメディ好きなので、その手の映画は点数が甘くなっちゃうんです。
アメリカには日本の啓蟄にあたる「グランドホッグ・デイ」という日があり、その
セレモニーを取材に行ったマーレイ扮する天気予報士が、時間のパラドックス
につかまり、同じ日を何度も何度も繰り返し体験してしまうというお話。

これからご紹介する日本映画『ターン』も、それと似た趣向の作品です。
原作は、北村薫の同名小説。
よく利用する図書館にビデオのレンタルコーナーがあり、そこでたまたま目に
ついたのがこの作品でした。

物語の主人公は、27歳の銅版画家・森真希(牧瀬里穂)。
ある日、講師をしている版画教室に向かうため車を運転していた真希は、セン
ターラインを超えてきたトラックと激突してしまいます。
次の瞬間、真希はなぜか自宅の座椅子でうたた寝をしている自分に気づきま
す。事故は夢だったのか・・・、そう思った真希でしたが、手元にあるのは昨日
図書館に返したはずの植物図鑑ではありませんか。
これってデジャ・ビュ?

『デジャ・ビュ』って、たまぁに経験しますけど不思議な気持ちになりますよね。
「初めての経験なのに、以前どこかで体験したり見たりしたことがあるような
感覚」を『デジャ・ビュ(deja vu)』といい、記憶錯誤の一種とされていますが、
その生起メカニズムはまだちゃんとは明らかにされていないようです。

不思議に思って外に出てみると、通りには人の姿も車もありません。
街はそのままなのに、存在しているのは真希ひとりだけ。彼女はそんな世界
に閉じ込められてしまったのです。しかも事故に遭った午後2時15分になる
と、また自宅の座椅子でうたた寝している自分に戻ってしまう。“ターン”してし
まうのです。それが何度続いたことでしょう。永遠に繰り返されるターンに、
真希は戸惑いつつも次第にその世界に順応していきます。でも、いくら順応し
ても募るのは寂寥感。

そんなある日、150日余りも沈黙し続けていた自宅の電話が突然、鳴り出し
ます。受話器に飛びつく真希。
聞こえてきたのは聞き覚えのない若い男の声でした。男は泉洋平(中村
勘太郎)と名乗り、真希に仕事の依頼をするために電話をしたと告げます。
初めて元いた世界と真希のいる世界がつながった瞬間でした。
けれど電話を切ってしまったら、もう二度とつながることはないかもしれない。
真希は戸惑う洋平を必死に説得、絶対電話を切らないという約束を取り付け
ます。そして、洋介から真希は元いた世界で何が起こっているのか、その衝
撃の事実を知らされることになるのです。
元いた世界では、事故で病院に担ぎ込まれた真希は、5ヶ月のあいだ一度も
目を覚ますことなく眠り続けていたということを・・・。

この作品、北村薫の“時と人”三部作(「スキップ」「ターン」「リセット」)の2作目
の映画化ということで、きっと評判にはなったんでしょうが、しっとりと上品に、
そしてきれいにまとまり過ぎちゃってる感じ。デジャ・ビュのようにいつか記憶の
中から消えてしまわないかとちょっと心配。
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by kiyotayoki | 2004-12-13 12:22 | 映画(た行)

『タイム・リミット』(2003 米)

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原題:『OUT OF TIME』(105分)
監督:カール・フランクリン
脚本:デイヴ・コラード
出演:デンゼル・ワシントン
    エヴァ・メンデス 
    サナ・レイサン
    ディーン・ケイン
    ジョン・ビリングスレイ  

デンゼル・ワシントンがアカデミー主演男優賞を取った後に出た作品として
あちらではそれなりに話題になったサスペンス映画だそうです。日本では
どうだったんでしょう。

映画の舞台は、常夏フロリダの小島バニアン・キー。
主人公のマット(D・ワシントン)は4人しか職員のいない警察署の署長を務め
ています。島では人格者で通っていますが、実は、夫のいる女性と不倫の真
っ最中。というのも、8ヶ月前から妻のアレックス(E・メンデス)とは別居状態
だから。
不倫相手は、高校時代のガールフレンド・アン(S・レイサン)。
アンは夫のクリス(D・ケイン)から日夜暴力を振るわれている女性。
DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者なんですね。
その悩み相談を受けるうちに、一線を越えてしまった模様。

DV被害に遭って悩んでいる女性は想像以上に多いようです。
暴力を振るう男となんか別れてしまえばいいのにと思いますが、そう簡単に
いかないのがこの問題の難しいところ。
簡単にいかないのは、被害に遭う女性が『ダブルバインド(二重拘束)』の罠に
はまり込んでしまっているから。
暴力を振るう男は、だいたい決まって翌日には自分の非を認めて平謝りしま
す。なのにまた暴力を振るう。そしてまた謝るを繰り返します。
このように、まるで相反する行動を相手にとられると、人は混乱して思考停止
状態に追い込まれ、相手の言うがままになってしまいがちなのです。
それが『ダブルバインド』の恐さ。
しかも、別れるということは、今までの自分の人生を否定してしまうことになり
ます。だから、なかなか別れる決断ができないんですね。

ある日、そのアンが末期癌であることがわかります。
打ちひしがれるアンに、マットは医者に勧められたスイスでの高度医療を受け
るように説得しますが、アンにもマットにも高額な医療費をまかなえる財力は
ありません。そこでマットは、アンのために禁じ手を使う決心をします。
警察署の金庫には、麻薬取締局が押収した48万5千ドルという大金が眠って
おり、1年間はそのまま保管され続けることになっていました。
マットはそれを流用することにしたのです。
マットはアンに大金の入ったバッグを手渡し、互いに旅立つ支度をして深夜に
会う約束をします。けれど、約束の時刻になってもアンは現れません。
不安になったマットがアンの家に出向くと、なんと家は火の海。
焼け跡からは、アンと夫のクリスと見られる焼死体が発見され、また、出火の
原因は放火であることも判明します。
ただの失火が放火殺人事件へと発展してしまったのです。
しかも、その捜査に当たるのは、別居中の妻アレックス。彼女は殺人課の刑事
なのです。

調べが進んでまず疑われるのは自分だと悟ったマットはあわてます。
アンと不倫していたということだけでもヤバいのに、前夜マットがアンの家の前
をうろついていたのを隣家の人が目撃していること、アンとの通話記録、アンの
保険金の受取人が夫からマットに変更されていること、などなど状況証拠の
すべてがマットに不利なものばかり。
それまでのんびりしていたお話の展開が、ここから急に緊迫してきます。
マットは警察署長という立場をフルに活用して、不利な証拠が発覚する前に
なんとか揉み消しつつ、単独で真犯人に迫っていきます。
だから後半はハラハラドキドキの連続。
難点は先が読めてしまうことでしょうか・・・。
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by kiyotayoki | 2004-11-14 10:09 | 映画(た行)

『隣のヒットマン』(2000 米)

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原題:『THE WHOLE NINE YARDS』(99分)
監督:ジョナサン・リン
脚本:ミッチェル・カプナー
出演:ブルース・ウィリス
    マシュー・ペリー
    ロザンナ・アークエット
    マイケル・クラーク・ダンカン
    ナターシャ・ヘンストリッジ
    アマンダ・ピート

殺し屋つながりで取り上げてみました。
最近、続編の『隣のヒットマンズ全弾発射』も公開されたようですしね。

ブッシュ再選で、カナダ移住を希望するアメリカ人が増えているというニュースを聞きましたが、
お話の舞台はカナダ・ケベック州モントリオール。
オープニングで紹介される街の素敵な風景を見たら、また移住希望者が増えそうな感じ。

その街で歯科医院を開業しているのが主人公オズ(M・ペリー)。歯医者だからリッチマンかと思ったら、家計は火の車。
というのも妻ソフィ(R・アークエット)の父が作った莫大な借金を返済してるから。
だからか、マイカーは旧式のトヨタ・カローラ。一方、妻の車は新型ビートル。2人の力関係を象徴してる感じです。

そんな夫婦の家の隣に、ある日、男が引っ越してきます。
男の名はジミー・チュデスキ(B・ウィリス)。
シカゴのマフィア御用達の殺し屋として、逮捕された時はタブロイド紙を賑わした男。
そんな男が出所して、カナダに引っ越してきたのです。というのも、マフィアを裏切ったせいで、命を狙われているから。
実はオズもシカゴ出身なのて、ジミーの素性は会ってすぐに気づきました。
ところがこの2人、意気投合しちゃうんですね。
人は自分と似た部分のある相手には親近感を覚えます。
オズは人を信用し過ぎて損ばかりしている男。一方、ジミーにも人を信用して危うく殺されそうになった過去があったので、そのあたりで親近感を覚えたのかも。心理用語でいえば『類似性』というやつです。
そうそう、こんな『類似性』もありました。
オズが「歯医者のプロとして、治療の際の痛みは最小限に抑える」と言うと、殺しのプロ・ジミー、「俺もだ」。

実のところ、オズは信用している妻ソフィに裏切られようとしていました。
ソフィはオズにかけた多額の保険金を手にするために、密かに殺し屋を雇っていたのです。
でも、なかなか殺してくれないので、今度はジミーに夫殺しを持ちかけます。
その一方で、ソフィはジミーの居場所をマフィアに教えれば報奨金がもらえるからとオズを説得、シカゴへ旅立たせます。

妻の企みも知らずシカゴへやってきたお人好しのオズは、ホテルに着くなり手荒い歓迎を受けます。部屋には見上げるほど大きな男(M・C・クラーク)が待ちかまえていたのです。
男はマフィアがジミーの後釜として雇った殺し屋でした。

・・・と、こんな風に書くと、主人公がどんどん深刻な状況へ追い込まれていくような気がするかもしれませんが、ご安心を。
この作品、コメディですから、サスペンス映画のような緊迫感は皆無。
ブルース・ウィリスをはじめ出演者はみんな楽しそうに演じています。
またB・ウィリスにはこういう軽いノリの役ってホントお似合い。
もちろんアメリカ映画ですから、イギリスのコメディ『キス★キス★バン★バン』のように人生の苦さを味わわされることもありません。
そういう意味では、安心して見られる娯楽作です。 
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by kiyotayoki | 2004-11-07 09:56 | 映画(た行)

『チョコレート』(2001 米)

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原題:『MONSTER'S BALL』(113分)
監督:マーク・フォスター
出演:ビリー・ボブ・ソーントン
    ハル・ベリー(この作品でアカデミー主演女優賞受賞)
    ピーター・ボイル
    ヒース・レジャー
    ショーン・コムズ

タイトルからイメージすると甘いラブロマンスかと思いがち。でも実際は、
かなりビターな味わいの恋物語です(原題は『怪物たちの舞踏会』)。

映画の舞台は、いまだに根強い人種差別が残っているらしいアメリカ東南部
のジョージア州。その地で親子三代にわたって刑務所の看守を務める家族
がいました。家長はハンク・グロトウスキ(B・B・ソーントン)。その父バック
(P・ボイル)は体の自由がきかない老人。息子のソニー(H・レジャー)は看守
になりたての若者。
この家族に足りないもの、それは女性。完璧な男所帯なのです。
父親譲りの権威主義者ハンクは、差別意識も強く、息子のソニーが隣りの黒人
の子ども達と仲良くするのを見て怒りを爆発させます。
そして、初めての死刑執行で取り乱したソニーに、
「お前は母親そっくりだ。根性を叩き直してやる!」と鉄拳制裁。
そんな父親に、また人生にも嫌気がさしたのか、ソニーはハンクの目の前で、
「親父は俺のことが嫌いかもしれないけど、俺は愛してたよ」という言葉を
残して発作的に拳銃自殺をしてしまいます。
ハンクの中で何かが変わったのはその瞬間でした。
このあと、ハンクは長年勉めた刑務所を依願退職してしまいます。

この物語に登場するもうひとつの家族。それは、ハンクたちが死刑を執行した
黒人男性とその妻子。妻レティシア(H・ベリー)が受け取った夫の遺品は衣類
と描きためた人物スケッチだけ。でも、彼女に哀しんでいる暇はありません。
家賃滞納で大家からは追い立てをくらい、過食症の息子は見張っていないと
すぐに馬鹿食いをしてしまうからです。
そんな彼女を悲劇がまた襲います。息子が車にはねられてしまったのです。
たまたまそこを車で通りかかったのがハンク。
運命の糸が2人を結びつけた瞬間です。
ハンクは泣き叫ぶレティシアと瀕死の息子を病院へ運びますが、手遅れで
息子は死亡。何の因果か、2人は共に息子を亡くすことになったのです。
この日から、2人は互いに運命の糸をたぐりよせ始めます。
ただ、レティシアは知りませんでした。思いを寄せ始めた男が、自分の夫を
死刑台に送り込んだ男だということを・・・。

一方のハンクはというと、レティシアの自宅で見た人物スケッチによって、彼女
が死刑囚の妻であったことを知るのですが、それで彼女への思いが立ち消え
になることはありませんでした。
肉体関係を結んでしまったということもありますが、父親の呪縛から解き放たれ
たのも大きかった。ある時、ハンクは年老いた父からこう罵られたのです。
「お前は母親そっくりだ!」
それは、自分が息子を罵る時に何度も使った侮蔑の言葉。
きっとその時、ハンクは悟ったのだと思います。自分は父親のコピー、分身だと。
父親に気に入られたいばかりに、父親そっくりな人間になっていたのです。
それに気づいた途端、ハンクの中から黒人を差別する意識も消えてしまいまし
た。差別意識も実は父親に植え付けられたものだったからです。

『エティプス・コンプレックス』という心理用語があります。
男の子が母親に愛着するあまりに、母親を自分から取り上げてしまう父親を
憎悪し、同時に罪悪感にも悩まされるという心の葛藤を表した言葉です。
男の子なら誰もが経験する通過儀礼のようなもの。
でも、幼くして母親を亡くしたハンクには愛着する相手は父親しかいなかった。
だから父親に対する憎悪の感情は生まれるはずもなく、自ら進んで父親の
コピー人間になってしまっていたのでしょう。

素の自分に戻ったハンクは、黒人女性のレティシアとの愛をますます深めて
いきます。けれど、やってくるんです。レティシアがハンクの元の職業を知る
時が。さてその時、2人は・・・。
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by kiyotayoki | 2004-10-15 09:27 | 映画(た行)

『時計じかけのオレンジ』(1971 英)

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原題:『A CLOCKWORK ORANGE』(137分)
監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス
出演:マルコム・マクダウェル
    パトリック・マギー
    エイドリアン・コリ

『博士の異常な愛情』(1964)、『2001年宇宙の旅』(1968)に続く、鬼才
キューブリック監督が描く近未来SF(個人的には、3作の中ではイチオシ)。
シュールな語感のタイトルですが、「何を考えているのかわからない変人」とか
「洗脳された人間」という意味があるのだそうな。

赤一色のオープニングタイトルが明けると、片方の目につけまつげをした主人
公アレックス(M・マクダウェル)のねめつけるような挑戦的な顔が画面から
迫ってきます。非常に印象的な幕開けです。
アレックスは毎日のように暴力やレイプに明け暮れる不良グループのリーダー。
今日も今日とて、地下道に巣くうゴキブリ(ホームレス)退治に精を出す彼らに
は良心のかけらも感じられません。
そこに罪悪感はなく、あるのは幼児的な万能感。
自分は特別だという思いが強く、共感能力が乏しいので、人の痛みが感じら
れない。だから平気で人を傷つけてしまうのです。
現代の日本では、このタイプの若者が様々な事件を起こしては問題になって
います。その意味では、33年も前に作られたのに時代を超先取りしてますよ
ね、この作品。

御機嫌な日々を送るアレックスでしたが、ある殺人事件が元で仲間に裏切ら
れ、ついに投獄されてしまいます。
そこで彼を待っていたのは、洗脳実験。
当局は、若者のカリスマ的存在であるアレックスを洗脳して、その攻撃性を
奪い去り、善良な人間に仕立て上げることで、世の秩序を取り戻そうとした
のです。
ここて使われたのは、心理用語で言えば『脱感作』と呼ばれる条件づけ。
暴力的欲求が芽生えると吐き気をもよおす薬物を投与して、欲求を刺激
するような映像を見せ続ける。
パブロフの有名な実験がありますよね。犬にエサをやる時、必ずベルを鳴ら
す。すると、ベルが鳴っただけで犬はよだれを垂らすようになるというもの。
それと同じで、暴力的欲求が芽生えるたびに吐き気をもよおすと、いつしか
人は吐き気をもよおすのがイヤで暴力的欲求を押さえ込んでしまうようになる。
こうして暴力性をなくしたアレックスは、さて・・・・。

この映画で使われた『脱感作』、実は、私たちの暮らしの中でも気づかない
うちに似たような条件づけが行われているのです。
例えば、ゲームやTV・映画による娯楽としての暴力の条件づけ。繰り返し
暴力的なシーンを見ることによって、いつの間にか暴力に対して無感覚に
なり、人によっては他者の痛みや苦しみに対して『脱感作』が起こり、実生活
において平気で暴力をふるってしまうことも・・・・。

この映画の鋭いところは、そういう未来(今の現状)を予見しているところかも
しれませんね。
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by kiyotayoki | 2004-10-11 17:48 | 映画(た行)

『タイタニック』(1997 米)

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原題:『TITANIC』(189分)
監督・製作・脚本:ジェームズ・キャメロン
出演:レオナルド・ディカプリオ
    ケイト・ウィンスレット
    ビリー・ゼイン
    キャシー・ベイツ他

この映画、当サイトでは2度目の登場ですが、
地上波でやっていたのを見たら、この作品にも『飛び降り自殺を止める』シーンがあったんですね。
自殺志願者はローズ(K・ウィンスレット)。
止めるのはジャック(L・ディカプリオ)。
ローズが初めてジャックという存在を知ることになるシーンです。

大嫌いな婚約者カル(B・ゼイン)と母親に辛く当たられたローズは、
すべてがイヤになってタイタニック号の船首から飛び降りようとします。
たまたまそれを見つけたジャックは、「やめるんだ」と言いながらローズのそばへ。
でも、やめそうにないローズを見てジャックは方針転換。
ジャックってホントに臨機応変のきくヤツです。やおら自分の靴や靴下を脱ぎ始めると、こう言うのです。
「飛び込むんなら、俺もそのあとからついて行く」
「馬鹿言わないで。死ぬわよ」
「覚悟してるよ。でも水は相当冷たいぜ。俺はそっちのほうが心配だな。
俺、凍った湖に落ちたことがあるんだ。その冷たさったらなかった。体中を
ナイフで刺されたような激痛が走るんだ。息もできないし何も考えられない。
ただ苦痛を感じるだけ。だからホントはイヤだけど、キミが飛び込むんなら、
俺、つき合うから」
「あなた、どうかしてるわ」
「みんなにそう言われる。でも身を投げるなんて君もどうかしてるよ」
その最後の言葉がきいたのか、ローズは飛び込まない選択をすることになります。

実際、心理学的に見ても最後の言葉がかなり効いてるんですね。
諺に『人のフリ見て我がフリ直せ』というのがありますが、これって対人心理学的にみてもなかなかの名言なんです。
というのは、ボクたちって他人のフリ(例えば、アホらしい振る舞い)はよく見えるから分析もできるし
批判もしますが、自分のこととなるとまるで見えなくなっちゃう。
恋愛などで、他人が見たらアホかと思うことを平気でやらかすのは自分が見えていないせい。
『人のフリ見て我がフリ直せ』というのは、人の変な行動を見て、じゃ自分はどうなんだろう、
変なことをしていないか冷静な目で見直してみようと言ってるんですね。
心理学では、そんな風に冷静な目で自分を見つめている状態を“自己意識が高まった”状態といいます。

ローズはジャックの行動を見て「どうかしてる」と思った。他人のことだから、よく見えるんですね。
するとジャックは「君だってどうかしてるよ」と言い返します。
その言葉で、そうか自分もジャックと同じくらい“どうかしてる”行動をとろうとしてるんだな、と気づかされたわけです。
つまり自己意識が高まって、自分の行為を冷静な目で見ることができるようになったということ。
〈きゃっ、私ったら何てバカなことをしようとしてるの?!〉
そう思った。だからローズは飛び降りるのをやめたんてすね。

けれど、運命とは皮肉なもので、結局は2人して冷たい海に飛び込むことになります。
そしてジャックが言っていた“体中をナイフで刺されたような激痛”を味わうことに。
けれど“何も考えられなくなる”は間違いだったようです。
だってジャックは最後の最後までローズのことを考え、励まし続けていたのですから。
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by kiyotayoki | 2004-10-02 22:48 | 映画(た行)

『タイタニック』(1997 米)

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原題:『TITANIC』(189分)
製作・監督・脚本:ジェームズ・キャメロン
主題歌:セリーヌ・ディオン my heart will go on
出演:レオナルド・ディカプリオ
    ケイト・ウィンスレット

防災の日にちなんで、今日はこの映画を選んでみました。
史上最悪の海難事故にラブストーリーをからめて描く、アカデミー賞を11部門
も獲得したスペクタクル・ロマン超大作です。

1912年、処女航海のタイタニック号は様々な階級、様々な人種、様々な夢や
希望を抱いた人々を乗せてイギリスのサウザンプトンを出港します。
乗客の中には、新天地アメリカに夢を抱く画家志望の青年ジャック(L・ディカプ
リオ)、そして上流階級の娘ローズ(K・ウィンスレット)の姿も。
普通の生活をしていれば出会うはずのなかった2人。
そんな2人を出会わせてくれたのは、タイタニックという閉じられた空間でした。
2人は互いに惹かれ合い、恋に落ちます。
けれど、その行く手には・・・。

運命の日である4月14日。
タイタニックは巨大な氷山と接触。その巨体は刻一刻と冷たい海の中へと引き
ずり込まれていきます。さて、2人の運命は・・・・。

応用心理学の一分野に『災害心理学』があります。
災害と人間心理の関係を研究する学問ですが、その研究者曰く、
「災害時、人は愚かになる」。
人間はパニックに陥ると、複雑なこと、わかりにくいことはできなくなってしまう
生き物だというのです。
たとえば、いつも自分が使っている通路が地震で通れなくなっただけで、混乱
して別の道を考えることができなくなってしまいます。
実例として、ビル火災で、引けば開く扉を最後まで押し続けて息絶えた人が
いたとか。

では、パニックにならずに冷静でいるにはどうすればいいのか。
それは「自分のことではなく、人のことを考える」こと。
スチュワーデスが冷静に避難誘導ができるのは、もちろん日頃訓練をしている
こともありますが、お客の命を守るという使命感があるから。
恋人のため家族のためと思うと、人間は不思議と冷静でいられるというのです。

ジャックとローズがパニックにならず、なんとか船外に脱出できたのも、互いに
相手を思う気持ちが強かったからかもしれませんね。
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by kiyotayoki | 2004-09-01 10:51 | 映画(た行)

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000 デンマーク)

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原題:『DANCER IN THE DARK』(140分)
監督:ラース・フォン・トリアー
音楽:ビョーク
出演:ビョーク
    カトリーヌ・ドヌーブ
    デヴィッド・モース
    ジョエル・グレイ

“緑色”がひとときの安らぎを与えてくれるのがこの映画。
『ドッグヴィル』のトリアー監督作品。
カンヌ映画祭でパルムドールと女優賞を獲得したものの、日本公開時は賛否が分かれた問題作です。

60年代のアメリカ。
東欧からの移民セルマ(ビョーク)は女手ひとつで息子を育てながら板金工場で働いています。
仕事は楽ではないものの、心優しい同僚(C・ドヌーブ)や理解ある大家に恵まれて、
なんとか日々の生活を送っていました。
そんな彼女の悩みは、遺伝性の病のため視力が失われつつあること。
しかも、息子も手術を受けない限り同じ運命をたどってしまうのです。
そのため彼女は残業までして息子の手術費用を貯えていました。

その無理がたたったのか、仕事でミスを連発、解雇の憂き目に。
しかも、頼りにしていた大家には貯めていたお金を盗まれてしまいます。
弱り目に祟り目というか、泣き面に蜂というか、不幸のドミノ倒しというか、とにかく、不幸が不幸を呼んでいく悲惨な状態。

そんな時、人間はどうするか。その対処法は人によって違いますが、彼女の場合は、空想への逃避でした。
空想の世界をつくり出し、その中に浸り込むことで、なんとか自分を癒し、心の均衡を取り戻そうとします。
この作品の上手いところは、彼女が空想の世界にいる時だけはミュージカル仕立てになるところ。
その世界にいる時だけは彼女はミュージカルスターになれるのです。

映画の中には何カ所かそういうシーンが出てきますが、スクリーンが緑に染まるのは、そんな空想シーンのひとつ。
主題歌とも呼べる『I'VE SEEN IT ALL』を彼女が歌う時です。
緑あふれる田園風景。それを映す川の水面も緑。そこにかかる鉄橋も緑。そして彼女のスカートも緑・・・。
緑は「穏やかで安らいだ気分にさせてくれる」色。その世界に浸り、歌うことで彼女はやっと心の平和を得ることができたのです。
それは、見ている私たちも同じ。緑の世界に浸ることで、
あまりにも残酷なストーリーに疲れ萎えそうになっている心が潤され、
もう少しこの物語につき合ってみようかなという気にさせてくれたのですから。
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by kiyotayoki | 2004-08-26 18:19 | 映画(た行)

『ドッグヴィル』(2003 デンマーク)

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原題:『DOGVILLE』(177分)
監督:ラース・フォン・トリアー
出演:ニコール・キッドマン
    ポール・ベタニー
    ローレン・バコール
    ジェームズ・カーン

大きなスタジオ内の黒い床に家や道を表す白線が引いてあり、必要最小限の
家具が配置されている。そんな殺風景なセットをドッグヴィルという村に見立て
て物語は展開します。カンヌ映画祭で話題を呼んだだけはある、監督のこだわ
りが強く感じられる映画です。

ロッキー山脈の麓にある小さな村に、ある夜ひとりの女(N・キッドマン)が逃げ
込んできます。どうやらギャングに追われているよう。
村一番のインテリを自負し、人々を正しく導くことに情熱を燃やすトム(P・ベタニ
ー)は素性の知れない彼女をかくまうことを集会で住民達に提案します。
それに対して住民たちが提示した受け入れ条件は、
「2週間で村人全員に気に入られること」

それを受けてトムは「住民が喜ぶような労働奉仕をしてみては」と女に勧めます。
翌日から女は朝から晩まで村の家々を回り、額に汗して働き始めます。
そんな真摯な態度に好感を持ったのか、村人は次第に女を受け入れ始めます。
と、そこまでは良かったんですが、女と住民との蜜月はそう長くは続きませんで
した。
というのも、女の生殺与奪の権利を握った村人たちは次第に傲慢に、そして横
暴にさえなっていったからです。
「オラたちのおかげであの女は助かってるんだ。ならばもっと働いていいはず」
「減るもんじゃなし、体でお礼をしてくれてもバチは当たるめえ」・・・と。

人間は状況によっては残虐な行為すら平然と行う生き物であることを様々な
心理実験で確かめた人がいます。
アメリカの社会心理学者ミルグラムです。
ミルグラムは、ナチスドイツによるユダヤ人虐殺、ベトナム戦争時のアメリカ兵
による村民虐殺などがなぜ起こったのかを心理実験で実証してみせました。
実験でわかったことは、
「ほとんどの人は、自分から見て正当と思われる人物が指示した場合、その
指示に従うのは当然であり、その行為に対しては責任を持たなくていいと考
える」ということ。
村人たちは全員の総意(あるいは一部の指導的立場の人間の指示)である
ことをいいことに、女に過酷な労働を強いることも、性的にいたぶることも当然
のことであると考えるようになったのです。
学校などで頻発する「いじめ」も、同様の心理が働いているのでしょう。
そんな状況下では“理性”など何の役にも立たないこともこの映画の中では
しっかりと描かれています。

かなり見応えのある映画ですが、後味は悪いかも。
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by kiyotayoki | 2004-08-14 16:43 | 映画(た行)